マウスピース矯正(非抜歯拡大矯正)に注意その3
今を遡ること15年ほど前、当院の矯正患者が年に2人まで減ったことがあります。あの時は、情熱も持って大好きな歯列矯正の臨床をやっていたが、受け入れられない、もうこれで終わりかと諦めかけました。ですが激減しても諦められないのですね。それほど矯正の臨床が大好きです。
そこで、色々勉強しました。矯正は当然として、どうしたら患者さん、矯正の患者さんに来てもらえるか?本当に勉強しました。
セミナーにも行きましたし、広告、マーケティング、経営、の本を買って勉強しました。Youtubeでも勉強しました。勉強して数年したところ家人に言われました。私が普段口にする言葉を聞いていたからでしょう、『あなたは有名な観光地に行ってそこではどのように人が来るように努力しているか見た方が良いよ。』
家内の言葉は私の心に刺さりました。
それからです。小規模事業主の集客を研究するためのフィールドワークが始まったのは。有名な観光地だけではなく地方で繁盛してる店、地方で長く続いている店を直接見に行って、飲食店なら直接利用して他店との違いを自分なりに分析しました。
当院の立地条件と極力近似した条件であることが大切です。ですから、大都市の繁盛店ではなく地方都市の繁盛店を分析するのです。
分析したことは、どのような商品構成でどのように顧客を獲得しているか、その実際です。 分析しているうちに新たな気付きがありました。それは、消費者がどのように考え、どのように行動するかの分析が必要であるということでした。
それは、いわゆるマーケティング理論、消費者心理学、行動心理学、行動経済学と分類される分野になります。
冒頭で15年ほど前に歯列矯正の患者が年に2人まで激減した年があった。と、書きましたが、原因は秋田県北にとある大型歯科医院(以下A歯科医院)ができたからでした。A歯科医院は新しく最新の設備がそろっています。そこと比べれば当院は野戦病院みたいなものです。矯正をしようとする患者は最新の設備を揃えた方を選択しました。所謂バンドワゴン効果と言うものです。バンドワゴン効果とはパレードの先頭にバンドワゴンがありそのにぎやかさ華々しさに人が引き寄せられる効果です。
そのA歯科医院では抜歯が必要な症例に非抜歯矯正をするところでした。当院は分析診断した上で抜歯が必要なものは抜歯症例としますし、非抜歯でできるものは当然非抜歯で行います。
ところが、患者はその医院と当院を比較して、A歯科医院は抜かない矯正を推進し、よつじ歯科では抜く矯正を推進している。と捉えていたのです。
単純に抜く矯正と抜かない矯正の二者択一と捉えていたのです。(このことは患者が教えてくれました。)
しかし、このように患者が捉えるの無理はありません。何故ならA歯科医院が矯正には抜く矯正と抜かない矯正がある。抜歯矯正は口元が引っ込み過ぎる。抜歯矯正よりも抜かない矯正のほうが良いと説明していました。抜かなくても並べられると説明して、抜歯が必要なものも抜かずに矯正しました。
その結果出っ歯、開咬をたくさん作りました。(過去のブログに記事があります。)患者が出っ歯になったと苦情を言うと、「引っ込めるとなると、時間がかかるし、抜歯しないといけない。それには更にお金がかかる。」と説明しています。恐ろしいことです。
A歯科医院の説明にある抜く矯正と抜かない矯正があって、抜かない矯正のほうが良いという主張は、誤りです。従来の歯科矯正学を否定するものです。奇麗な歯並びときれいな横顔、歯列の長期安定を目標として考案された診断基準に照らし合わせて、抜歯か非抜歯かの判定が下されます。診断結果で抜歯が必要と診断が出たら、抜歯が必要となります。抜歯が不必要となったら抜歯はしません。
A歯科医院は意図してやったかわかりませんが結果的に当院を対比させることになりました。
対比が分かり易いように箇条書きにします。
A歯科:抜歯矯正と非抜歯矯正の2つのやり方があり、抜歯すると口元が引っ込み過ぎる
から非抜歯のほうが良い。
当院:分析、診断した上で抜歯が必要かどうかきまる。
非抜歯でできると言われたらそちらを選ぶのは無理もありません。Aの説明を聞いた方はは100%Aを選ぶ説明です。当院を選ぶのは変です。
そこで10年程前から説明を付け加え修正した説明を患者にしています。修正したものをを対比させて下に挙げます。
A歯科:抜歯矯正と非抜歯矯正の2つのやり方があり、抜歯すると口元が引っ込み過ぎる
から非抜歯のほうが良い。
当院:分析、診断した上で抜歯が必要かどうかきまる。抜歯が必要な症例を非抜歯でなら
べると出っ歯になる。
当院の説明を直上の様に変えました。変えて少ししてあのコロナ騒動が起きました。コロナを経てSPで調べる人が増えました。YouTubeも見る人が増えました。ネット上には非抜歯拡大矯正(マウスピース矯正も含む)に注意を促す記事、動画が沢山出ています。ですからその記事や動画に接する機会が増えた筈です。ですが、これは以前にも書きましたが、圧倒的多数のマウスピース矯正の広告、動画に埋もれてしまい、注意を促す記事や動画にたどり着けないのです。ですから非抜歯拡大矯正を選ぶ方がまだ沢山います。真面目に矯正臨床を行っている先生方はこの状況に危機感を憶えています。が、変えることができません。
その一方、これは患者と話をして気付いたことですが。先ほどSPで調べる人が増えたと言いましたが、歯科治療に関しては、SPで調べない層がかなり厚く存在していると私は思っています。多くの方は、矯正をする歯科医院を選ぶに当たり、第一選択は周囲の人に訊いて答えに出た歯科医院。spで調べても、どこであっても同じと思って、通いやすい地理的条件化、診療時間、営業日だけで検索しています。断言できます。そのような患者も多数当院を受診しているからです。
行動経済学では、人間の判断、選択が様々な条件で左右されると教えてくれます。自分の頭で判断していると思っても実はその判断は誘導されている危険があり、合理的判断をしていると思っても偏っている場合がある。と教えています。皆さん注意しましょう。
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